
従来は就労規則などで副業を禁止するのが一般的だったが、最近では副業を解禁する企業も増えている。こうした背景には少子高齢化に伴う国内での生産力の低下といったものや、働き方の多様化などがある。
今後も副業を解禁する企業が増加すると共に、実際に副業をする人も増えるだろう。
一方で副業を解禁しながらも副業に対する規制を設けている企業も多い。企業にとって副業は本業との相乗効果が狙える反面、本業に悪い影響を及ぼしかねないものでもあるためだ。従業員が本業と副業のバランスをとりながら働けるよう、副業に規制を設けている。
この記事では企業が副業を解禁しながらも規制を設けている背景と、実際に導入されている規制の例を一部紹介する。副業に関する規制を理解した上で、本業と副業とのバランスの取り方を模索しよう。
副業に規制を設ける背景

企業が副業を解禁する理由には、企業自体の体力の低下で従業員に十分な給与が支払えなくなったといったネガティブなものだけでなく、従業員のスキルアップや人脈作りなどのポジティブなものも存在する。
従業員一人ひとりがスキルアップをし、人脈を広げることで、本業での生産性が上がる効果が副業には期待されているのだ。
本業との相乗効果を狙った上での副業解禁なので、副業のために本業が疎かになってしまっては副業を解禁した意味もなくなってしまう。そのため副業を解禁する場合でも規制を設けるケースが存在するのだ。
「下手に規制なんかしない方がいい。個人の自由に任せるべきだ」
という意見もあるかもしれない。しかし極端に自由な状況では、人は逆に物事を適切に判断できなくなってしまうことがある。自由すぎる環境では、考える量も膨大になる。
もちろん規制のしすぎはよくないが、ある程度規制があった方が副業がしやすくなるという人が実はこの世には多い。
実際に行われている規制の例

以下では実際に行われている副業に対する規制の例を一部紹介する。
勤務先への申告
副業をしていることを申告するように求めている企業は多い。申告内容は、
- 雇用形態
- 勤務先
- 仕事の内容
- 副業の勤務時間
などだが、企業によって申告内容は異なる。申告漏れがあると罰則などの対象になることもあるため、申告が必要な場合は必ず行うようにしよう。
労働者の職業選択の自由は日本国憲法第22条第1項で定められていることだが、本業への勤務上のマナーはある程度守るという意識は持つようにしよう。
同業他社での副業を禁止
本業と同業他社での副業を禁止するケースも多い。同業他社での副業は後に解説する情報漏洩などのリスクもある。
「自社の情報が従業員の副業によって他社に流れることによって、自社の利益が損なわれるのではないか」
こうしたリスクを回避するための規制だ。
また、自社の人材が他社に流れてしまうのを防ぐ目的でこうした規制を設けている場合もある。
情報漏洩対策
従業員が副業を通して社外の人と関わることで、社内の情報が漏洩するのを防ぐために、副業に関する研修を行っている企業も存在する。従業員にコンプライアンスへの意識を高める研修を受けさせることで副業での情報漏洩を防ごうとしているのだ。
特に最近ではSNSなどのソーシャルメディアを介して仕事を受注するケースも増えている。SNSを使って副業をしようとしている人にとっては情報発信は必須だ。しかし従業員がSNSを通して副業を行う場合情報漏洩のリスクも高まる。
従業員の情報漏洩を防止する意識を高め、安全に副業をしてもらうためにも企業が研修を行うのは高い効果が狙えるだろう。
副業での労働時間を規制する企業も
従業員に対して副業での労働時間を規制している企業も存在する。
副業が禁止されていた背景には「副業が本業に悪い影響を及ぼすのではないか」と考えられていた面もある。
本業以外の場所だったとしても労働時間が長くなれば疲労も蓄積しやすくなる。副業をすることで心身に不調を来たし、結果本業がおろそかになるのではないかと危惧したため、副業を禁止していたのだ。
そのため従業員の健康を守る目的で副業での労働時間に対して規制を設けているという企業は少なくない。
本来副業はスキルアップだけでなく目標達成や自己実現のために取り組むものだ。副業のために体を壊してしまっては元も子もない。自身で健康管理を徹底しながら取り組むべきだ。
そのためにも副業での労働時間の管理は重要になってくる。自分で管理ができる人にとっては不都合な面もあるかもしれないが、全ての人が自己管理を徹底できるわけではない。企業側が労働時間に規制を設けた方が分かりやすい場合も多いのだ。
まとめ
副業を解禁しながらも規制を設けることには大きな意味がある。もちろん企業側の都合も規制を設ける理由の一つだが、決してそれだけではない。規制を設けることで従業員がより快適に副業ができるよう狙っている部分もあるのだ。
実際に副業をする際には、勤務先で副業がどのように扱われているのかを事前に確認するようにしよう。