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コラム:「パソコンとインターネットがあれば誰でもできる仕事」の壁

筆者の仕事である作家とライターなどの執筆業は、基本的にパソコンとインターネットがあればできる仕事だ。仕事内容に慣れさえすれば、ある程度稼げるようにもなる。そして最近では執筆業の他にも「パソコンとインターネットがあればできる仕事」は増えている。

だからずっと筆者は「こういう仕事が普及することで、女性の自己実現のチャンスも増えるのではないか」と考えてきた。その考えの元で発信してきたことも多い。

ただ、最近ふと思うことがある。

「パソコンとインターネットがあればできる」

確かにそうなのだが、これは逆に言えば「パソコンとインターネットがなければできない」ということでもある、と。

「ギガ難民」への疑問

少し前、携帯会社のCMで「ギガ難民」という言葉を耳にした。月末あたりになるとギガが足りなくなって動画が見れなくなるなどの状況に陥ってしまう人たちのことをそう呼ぶらしい。

正直私にはこの「ギガ難民」という言葉がピンとこなかった。私はギガ難民になったことがない。月末に「ギガが足りない」という状況になったことがない。

なぜかというと、私はスマホとは別にインターネット回線を契約しているからだ。実家にいる間も、一人暮らしをしている間も、結婚してからも、「スマホ・携帯以外にインターネットを使っている」というのは私にとって当たり前のことだった。

同時に100%自分のものというわけではないものの、ある程度自分が自由に使えるパソコンがあるというのも私にとって当たり前のことだった。

自宅ではインターネット回線でスマホを使っているため、月末にギガ不足になることはない。

そんな筆者にとってCMでの「ギガ難民」という言葉は、「自分にとっての常識が必ずしも他人にとっての常識ではない」という事実を改めて突きつける言葉だったのだ。

家で仕事をするための自己投資

今使っているパソコンは2016年あたりに20万円弱で購入した。さらに私は2020年にコロナ対策として国民全員に支給された10万円の給付金でiPadと専用のキーボードとiPhoneSEを購入した。これらは全て仕事をするための道具でもある。

毎年の確定申告ではインターネット料金も経費として計上している。インターネット料金の平均は毎月4,000〜6,000円。

つまり執筆業や在宅秘書・経理、データ入力などの「パソコンとインターネットがあればできる仕事」は、ある程度の初期投資が必要な仕事ではある。

「自己実現をするためには自己投資が必要」

確かにそうなのだが、実際にその金額を出すときにためらってしまうのは人間の情というべきもの。頭では分かっていても実行できない人の方が圧倒的に多い。

それを「意志が弱い」と批判する人もいるが、ここ数年間自己投資をし、成果を出しながらも同時になかなか光が見えない状況に何度も苦しんできた筆者は安易にそう言い切ることもできない。

なかなか一歩を踏み出せない人を「意志が弱い」と批判するのは簡単なことだ。そうやって相手を批判できるだけ自分は立場が相手よりも上だと思うのであれば、簡単な手段に突っ走るのではなく「どうやったら一歩踏み出せるのか」を一緒に考えてやるというのが筋ではないだろうか。

それっぽい正論を言うだけならば、誰にでもできる。

「自宅で仕事をしたい」と言う女性の本音

さらに「自宅で働きながら自立、そして自己実現を目指したい」と言っている女性はどんな人なのだろうかということについて考える。

確かに「もともとあったスキルを活かしたい」という人も多いとは思う。しかし、全員がそういうわけではない。

結婚して、出産して、育児をして、気がついたら親の介護も始まっていて、そういう中で外で仕事をすることが難しくなってしまった女性。

「まとまった時間はとれないから外で働くのは難しいけど、自宅でできる仕事なら出産・育児・介護をしていてもできるかもしれない」

そういう人も多いのではないだろうか。むしろ「スキルを活かしたい」という人よりも「出産・育児・介護の隙間時間でできる仕事をしたい」という人の方が筆者が思っている以上に多いのかもしれない。

女性が家で働くために必要なインフラを用意するためのハードル

自宅にインターネットがない、同時に自分が自由に使えるパソコンがない。そんな女性が、

「出産・育児・介護の隙間時間でできる、パソコンとインターネットがあればできる仕事」

をするためにはまずパソコンとインターネットを用意しなければならない。

しかし残念ながら彼女たちは自分の力だけで初期投資ができるわけではないことも多い。もしかしたら何とかして自力でパソコンを購入することはできるかもしれないが、インターネットの契約の決定権を家長である夫が握っていることはとても多い。

「自宅でできる仕事がしたいから、インターネットを契約したい」

意を決して夫に相談するものの、

「本当にできるの?」

と聞き返されてしまう。

そして自信をなくし、「やっぱりいい……」ということになる。

こんな流れは、実は多いのではないだろうか。

中にはモラハラなどの目的で「本当にできるの?お前にできるわけがないだろう」と返してくる男もいる。しかし全く悪意もなく、ただ妻を気づかってこう聞き返しているだけということもとても多い。

そもそも自己投資に限らず「投資」をする前には回収プランを立てるのはある意味当たり前のことだ。「回収プランはないが投資はする」というのはリスクの高い博打でしかない。だから「投資をしようと思う」と言っている人に対して「どんな回収プランを考えているの?」と聞き返すのは男性に限らず女性でも自然なこと。

夫からの「本当にできるの?」は単なる相手への心配であり、優しさであり、投資に対する回収プランの有無とその内容を尋ねているだけである可能性ももちろんある。

だから「出産・育児・介護の隙間時間を使って、パソコンとインターネットがあればできる仕事をしたい」という女性は「本当にできるの?」と尋ねられた時に「できる!」と言い切れるだけの自信と根拠が必要になってくる。

とはいうものの、「新しいことに挑戦しようと思う」に対して「本当にできるの?」と尋ねられ、自信を失う人が少なくないのもまた事実。

まとめ:筆者の使命

30歳の既婚者である筆者は、

「仕事は家で執筆業をしています」

と言うと、

「じゃあ出産とか育児とかもしやすそうだね」

と返されることが多い。

まだ実際にやったことがないためなんとも言えない部分も多いのだが、他人からそう言われることに筆者自身も納得はしている。

「パソコンとインターネットがあればできる仕事」の普及は女性の働き方を変え、女性の社会進出を促進させるのだと信じている。信じているから筆者は自分の働き方をこうして発信している。

しかし、

「自己実現をしたい」

と願う女性に対して本当に必要なのはノウハウや具体的な提案ではなく、「私にもできる」という自信のなのではないだろうか……と、こうして発信していく中で感じる瞬間が最近増えた。

だから自身の経験を通して新しい働き方を提案し、女性の社会進出に貢献したいと思うのであれば、ただ自宅でできる仕事の提案やノウハウを紹介するだけではなく、根本的な自信を育てられるコンテンツを作る必要がある。

「私にもできる」

そう思わせることが、筆者の本当の使命ではないだろうか。

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