
作家を名乗っている私のところには「小説家になりたいんですけどどうしたらいいですか?」と聞いてくる人もいる。
そういう人への私なりのアドバイスを以下では紹介する。
まずは文学賞に挑戦

小説家になりたいのであれば、まずは文学賞に挑戦することをおすすめする。確かに世の中には電子書籍出版など、自作の作品を販売して稼ぐ方法もあるが、そこに行く前に「文学賞への挑戦」があるのとないのとでは差があるように感じる。
多くの文学賞には〆切・提出期限が存在する。その期限を意識して作品執筆をすることで「〆切に対する意識を養う」以外の小説家としてのマインドを養うこうことができるという意味ももちろんある。
文学賞への挑戦をおすすめする理由はそれだけではない。
作品を完成させられない小説家は小説家として仕事をすることはできない。「作品を完成させる」とはただ物語を完結させるだけでなく、自分で「これで完成だ」と納得できなければならない。
決められた〆切がある文学賞への挑戦では物語を完結させ、「これで完成だ」と納得する感覚を養うことができる。これこそが文学賞に挑戦することの本当の意味だと私は思う。
小説投稿サイトに投稿する

最近では小説投稿サイトから小説家としてのキャリアをスタートさせる人も増えてきた。それを狙って投稿サイトを利用するのもおすすめだ。
しかし私が小説投稿サイトの利用をおすすめする理由は他にもある。小説投稿サイトもまた、小説家として必要なマインドを養える場だと思うから、小説家になりたい人は挑戦すべきだと思う。
何度文学賞に挑戦しても小説家になれないという場合、その原因は2つある。
1つ目は「大賞が取れていない」というもの。何度も挑戦していても、大賞が取れていないために作品を世に出すきっかけがつかめないから小説家になれない。これは誰もが想像できることだと思う。
もう1つの原因は作者自身が「他人からの評価がなければ自分の作品を世に出せない」と強く思っていることだ。極度に他人から評価されるのを恐れ、自分の作品に自信がないから小説家になれずにいる。
「文学賞で大賞を取らなければ小説家になれない」とは裏を返せば「他人からの評価がなければ小説家に慣れない」ということでもある。もちろん権威ある人からの評価というのは大事なものだ。かといってそこに依存するのはやはり間違っている。
編集者やキャリアのある作家・小説家だからといって「絶対的な価値のある素晴らしい作品」を100%見つけて評価できるわけではない。各文学賞にはそれぞれ審査基準が存在するものの、作品の良し悪しを判断するのは結局は個人の主観になってくる。
だから文学賞に落ちたからといって自分の作品に価値がないというわけではない。
それなのに「大賞がとれないから小説家になれない」というのは権威依存の現れではないだろうか。文学賞に何度も挑戦し続けている人の中には作品に問題がなくとも本人の自信に問題がないという人も実は多い。
自分自身が「誰が何と言おうとも私の作品は素晴らしい」と言えなければ小説家の仕事はやっていけない。
だいたい現在では先述したように小説投稿サイトから小説家になる人もいれば、後述する電子書籍で小説家になる人もいる。あらゆるところにチャンスが落ちているのに、権威を盲信しているとそうしたチャンスを逃してしまう。権威は価値のないものとは言い切れないが、盲信は禁物だ。
こういう世の中だからこそ、だから自分の手で自分の作品を世に出せるメンタルも必要になってくるの。
小説投稿サイトに投稿することはこうしたメンタルを養わせてくれる。だから私は小説家になりたいと言う人に投稿サイトの利用をおすすめする。
電子書籍出版をする

私は電子書籍出版で作家をやっている人間ではあるが、それでも電子書籍出版を安易に他人にすすめる気にはなれない。文学賞や投稿サイトの利用を経験した人にしか電子書籍出版はできないと思っている。
「小説家になりたい」
そう言いながらいろんなことに挑戦していると、小説家としての仕事に関するいろんな情報が入ってくるはずだ。
「小説は全く売れない」
「小説だけで食っていくのは難しい」
夢に向かって努力をすればするほど、これらの情報を具体的な数字と共に知っていくことになる。
同時に、
「別に小説一本じゃなくても小説家の仕事はやっていける」
「兼業の小説家はたくさんいる」
「この世にはいろんな小説家がいる」
ということも知っていく。
そして最終的には、
「小説家としてやっていくためには、自分自身が小説執筆が好きかどうかが一番重要になってくる」
ということに思い至る。
はっきり言って電子書籍出版の世界では小説は本当に売れない。
最近漫画の電子書籍出版は紙の出版を抜いたらしい。テクニックを駆使することでビジネス書や自己啓発本は売ることができる。
それでも小説は売れない。そもそも紙の本ですら売れてない。小説とはそういう市場だ。
電子書籍で小説を出版すると、こうした市場の現状に正面からぶつかることになる。その衝撃に耐え、続けるためにはそれなりのメンタルの強さが必要だ。
どうしても「小説家になりたい」と言っている段階の人は「小説一本で生活していかなければならない」などと考えてしまいがちになる。そう思っている人がいきなり電子書籍出版を始めようとすると大好きだったはずの執筆活動が嫌いになってしまうかもしれない。
しかしいろいろ挑戦していく中で小説家の実態や市場の現状を知った上で電子書籍出版を始めれば、小説家としてのさまざまな可能性に挑戦し、楽しみながら活動ができる。電子書籍出版だけでなく、出版社から紙の本を出す場合でもこの感覚は役に立つ。
楽しみながら小説家として活動するためにも電子書籍出版は文学賞、小説投稿サイトを経験した上で挑戦するべきだと私は思う。
まとめ
ここに紹介したのはあくまでも個人的な「小説家になる方法」でしかない。
最後に1つ。
私は中学2年生まで美術の成績が「3」だった。どんなに頑張っても成績は上がらなかった。
しかし中学3年生になって美術の担当教諭が変わった途端、成績が「5」になった。
他人からの評価などその程度のものでしかない。