もちろん「いい作品」を書くことも大事なことだ。いい作品を書くために技術を磨く努力も小説家としてやっていく上では必要になってくる。

私も以前は「いい作品を書くこと」「そのための努力を惜しまないこと」が小説家としては最も大切なことなのだと思っていた。

しかし、実際に小説家として活動していく中で、実はいい作品が書けるかどうかよりももっと大事なことがあるのではないか……と痛感する瞬間に何度も直面したことがある。

逆にいい作品が書けるかどうかは二の次で、むしろその「もっと大事なこと」さえできていれば小説家としてやっていけるのではないかとさえ感じる。

その「もっと大事なこと」をここの記事では紹介する。

作品を完成させられること

小説家は世の中に自分で書いた小説を発表し、読者に読んでもらうことで成り立つ仕事だ。読者に読んでもらうためにはまず、作品を完成させなければならない。

「作品を完成させる」とは、ただ物語を最初から最後まで書き切るという意味だけではない。「自分で自分の作品に対して納得する」という意味も込められている。

せっかく物語を最後まで書き切っても、いつまでもいつまでもその作品に対してダメ出しをし続け、修正を加え続ける人がいる。いつまで経っても修正が終わらないため作品が完成しない。作品が完成しないため作品が世に出ることもない。

「どんな名文でも人から読まれなければこの世に存在しないのと同じ」

売れない作家を揶揄する意味で言われることがあるこの言葉ではあるが、作品を完成させられない人にも当てはまる言葉でもある。作品を完成させられず、人に読まれないままになっている作品はどんなに「いいものを作りたい」という思いで作られていたとしてもこの世に存在しないのと同じだ。

他人の評価を気にしないメンタル

自分の作品を世に出すと、肯定的な意見だけでなくネガティブなことを言われることもある。もちろん誹謗中傷に対しては毅然とした態度を取るべきではある。かといって「つまらなかった」などのネガティブな感想であってもそれは個人の感想として尊重されるべきだ(直接相手に言うかどうかは別の話だが)。

そういった個人のネガティブな感想を気にしないメンタルが小説家として仕事をする際には求められる。

もっと言うと「面白かった」などの一見ポジティブな感想であっても自分にとって足枷になりかねない。

どうしても人は一度ある手法で肯定的な意見をもらうと、次も同じ手法を取ろうとしてしまう

「次も面白いと言ってもらおう」とするあまり、自分で自分の劣化版コピーを量産してしまいかねないのだ。そうなると自分の技術は向上しない上に世界観を狭めてしまう。

ファンからの声援はとても貴重なものだが、適度に裏切っていった方がいい。

小説家としての道を極めるためにはこうした他人からの評価を気にしないメンタルが求められる。

誰がなんと言おうと「私の作品は面白い」と言い切る姿勢

自分の作品を一番愛しているのは自分自身でなければ小説家はやっていけない。上記のことに通ずる部分もあるが、誰がなんと言おうと「私の作品は面白い」と言い切れるだけの自信が小説家には求められるのだ。

もしネガティブな感想を送られてきたとしても、自信があればモチベーションを左右されることもない。

そして技術を向上させるためにも自信は必要になってくる。自信がない状態では人からの言葉に自分の作品が左右されやすくなる。もちろん中には聞いた方がいいアドバイスも存在するが、聞く意味のないアドバイスも決して少なくない。

だいたい小説の良し悪しの判断など個人の主観によるところが大きいのだから、例えどんなに相手が力説していたとしても相手の言っていることが100%正解とも言い切れない。

ちなみに強くアドバイスをしてくる人間ほど、自分のアドバイスに責任がなかったりする。

「そんなにこれをやるとうまくいくというなら、一回自分でやって見せてくれ」

そう言い返すと一瞬で黙る。

アドバイスの中にはこういうものが少なくないにもかかわらず、自信がない状態では正面から受け止めてしまいがちになる。そうなると自分の軸もブレてしまう。自分の世界観を表現できなくなれば、技術も向上しなくなる。

本当に謙虚な姿勢というのは自信がある人から出てくるものだ。自信のない人間の言う「謙虚」は「卑屈」でしかない。卑屈は最終的に自分も周りもダメにする。

小説家としての技術を磨くためにも、「自分の作品はおもしろい」と自分で言い切れるだけの自信が必要だ。

まとめ

私がここであげた3つの要素は、一見私が「いい作品」を書くことを放棄しているかのようにも見えるかもしれない。そう誤解されることを覚悟の上で私はこう書いている。

ここにあげた3つの要素を意識して執筆活動をすることで、結果として「いい作品」が書けるようになるのだと私は信じている。

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